社長コラム 六風詠草「姉」

プリント故郷で暮らしている姉から、カボチャやいんげん・生姜などの野菜が送られてきた。自分の畑で獲れた野菜を、あれもこれもと箱に詰めてくれた姉の心が嬉しい。

 この姉は、無類のお人好しだ。美人でもなく学もなく、農家の嫁として三人のすなおな子供達を生み育て、周囲の人たちの役に立ち、喜んでもらおうと、いつも一生懸命に生きているような人だ。私もこの姉の心を見習いたいものだといつも思う。

 私は、両親が亡くなってからは故郷山形県への足が、めっきり遠のいてしまった。例え帰省しても、実家より、姉や妹の所の方が行き易い。特に長姉であるこの姉のところには、必ず行くことにしている。神様みたいに欲の無い優しい姉なので、私は子供の頃から大好きだった。今でも私が行くと、「良く来た、良く来た」と言って、顔をくしゃくしゃにして喜んでくれる。

夫唱婦随というのか、この姉の夫もまた、無類のお人好しで、大喜びで迎えてくれる。二人共もう八十歳を超えているのだが、必ずしも万全ではない身体を労わりながら、少しの畑を耕しながら、つましく暮らしているのだ。

 昨夏、私達夫婦が帰省した折も、墓参のあとは、最初にこの姉の所に行った。ナスとワカシ(ブリの幼魚)を煮た田舎料理を食べさせてくれた。私が大好きなのを知っているのだ。味噌汁も青菜だけがどっさり入った素朴で懐かしい味でついお代りをしてしまう。差し出された姉の手は、しわくちゃで色黒だ。

いまどきの、よその奥さんたちの、指輪をした白い手とつい比べてしまう。

しかし、姉はそんなこと気にもしない風にいつもニコニコしている。

 

  指輪など ないしわくちゃの手の姉は 幸せそうに 暮らしておりぬ

 

 姉の夫は酒が大好きだ。酔う程に、上機嫌となり、あの酒を持ってこいのあの料理を出せのと指図された姉は「ハイハイ」といつも言うことを聞いている。

 

  今どきは 時代遅れと言われても 姉はひたすら 夫にしたがう

 

 この姉夫婦にも、辛い事や悲しい事が、沢山あったことを私は知っている。

それでも、人生の成功だの、自己実現だのと、むずかしい事とは関係ない所でこの姉夫婦は幸せに暮らしているのだ。

 

  幸せの 本当の意味知っている つましく弱い人なればこそ